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いのちをつなぐ約束

4月15日は、亡き母の12回目の命日です。
 今回、池田整治公式HPの池田文庫「心のビタミン」の2011年に
収められている母追憶のエッセイを改めて配信させて頂きます。

なお、この拙稿は、出版当時に4人の子供への遺言のつもりで
書いた拙著「心の旅路」(新日本文芸協会)の冒頭に載せているエッセイです・・・
 
 ちなみに、この「心の旅路」の写真は、全て私の撮ったもので、
中には日本一の夕陽フォトコンテストでグランプリを取ったものもあります。
是非、HPでもご笑覧ください^^。 

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   いのちをつなぐ約束
       ・・・このエッセーを今は亡き父母に捧げる

 84歳の高齢で末期癌に侵されながらも気丈夫だった母が
最後のトイレに一人で行った後、
「後は頼んだよ」
 とついに子供部屋の仮の自分のベットに横たわった。

 そして
「父(14年前に他界)が綺麗な所からおいでおいでと迎えにきている」

と伝え、 学校から帰宅した4人の孫達に

「大学最後まで頑張って...」

「好きな高校で野球頑張って...」
           と最後の遺言。

 その夜、苦しそうな母の呼吸の間隔が段々と長くなる。

「明日の朝には姉夫婦が来るけど待つ?」

 と聞くと目を開け顔を横に振る。

 そこで母の上体を抱きかかえ、子供達に手をしっかり握らせ

「お母さん84年間ご苦労様。
 後は子供達がしっかりやるから
  お父さんの所にいってらっしゃい」

と声をかけると、目を開け抜けるようにと父の下に旅立った。

 母は、子供に恵まれなかった我が家に隣家から
6歳で養女としてやってきた。

隣にいるだけに里心が出ないように実母が他人として厳しく接し、
辛い思いをして忍耐強く育った。

 父は同じ村に7人兄弟の末っ子として生まれた。
旧家ではあるが生業の製材所が斜陽でしかも子沢山。

父は家計を助けるため山仕事、農作業などの奉公に小さいときから出た。
体格もよく働き者の父は仕事師として評判だったという。

 当時の愛媛の最南端の寒村の娯楽は相撲。
父も青年に達する頃には「八重鶴」という四股名(しこな)でならした。

 最大のイベントは5人ずつの勝ち抜き戦で行われる
土佐(高知県)対伊予(愛媛県)の対抗戦。
 

 昭和8年、二十歳になり家庭事情で海軍入団を決めた最期の相撲大会に
父は伊予の大将として出場。

土佐方は最強選手を先鋒に持ってきて
あれよあれよいう間に伊予の4人を破る。

「伊予の鬼、八重鶴を出せ~」
と相手方応援団が野次る中満を期して土俵に上がった父
は逆に一気に4人を倒し、
いよいよ大将決戦。

いやが上でも土俵は盛り上がる。

父は得意の胸あぐらで倒そうとするが流石に疲れていて
相手に体を浴びせられほぼ同体で土俵際に倒れる。

内心「負けた」と思ったらしい。

しかしどちらの陣営も
「勝った!」「勝った!」
 と大騒ぎ・・。

 その時、名村長の田中氏が土俵に上がり

「この若者は明日海軍に行く。
  国のために命を捧げる若者に花を添えてくれないか」。

「おお!!いいぞ~~!」
「八重鶴の勝ちだ~!」
「国のために頑張ってこ~い!!」。

勝ち名乗りを受けながら父は人の世の情けに涙した。

そしてこの父を土俵の下で14歳になった母が
淡い乙女心でじっと見つめていた。
 
 同じ波は引き合うと言うが、二人はいつしか知り合い
生涯の伴侶として考えるようになる。

そして昭和15年戦争前最後の帰省時、
戦地から帰ったら婿養子になることで婚約。
 
 南方に出征する父に母は自分の綾錦の帯で
尺八の袋を作ってお守り代わりに渡した。

父が趣味で手作りの尺八を嗜むことを知っていたからだ。

 二人にとって「綾錦の袋」が

「必ず帰ってくる」
「いつまでも帰りを待つ」

 という約束の証であった。


 それから7年間、
 戦争は二人を逢わせてくれなかった。

特にシンガポールで英国軍の捕虜となった最後の2年間は
一切音沙汰無し。

「もう帰ってこないから他に養子貰え」
 という周囲の勧めに母は

「たとえ帰らなくとも他の人とは結婚しない」。


 現地では、解放軍の将校待遇での勧誘に多くの将兵が応じる中で、
父が傍らの綾錦の袋を見つめながら

「我々が帰れば日本は再生できる」
           と部下を説諭。

 結局父の乗組員は全員無事帰国することができた。 
 
 今、その綾錦の袋は父と母が二人で築き、
母亡き後は空き家となっている田舎の我が家のリビングで
一人?孫の帰りを待っている。
 
 もし、二人が7年間約束を守っていなければ、
今の私はおらず、母の最後を看取った4人の孫もこの世に生を受けていない。

 いのちをつないだ父と母の固い約束にただただ感謝するのみ。

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(追記)

 その愛媛の最南端の父母が築いた実家に、
昨年5月から孫である我が三男悠人二十歳が
単身農業にかえっている。

 大学を中退して、祖父と同じ19歳での大決断。

 祖父母のいのちをつないだ約束は
つながっていく・・・

 願わくば、皆さんの暖かいご支援を
よろしくお願い致します・・

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◆池田整治 
 公式HP: http://ikedaseiji.info/
◆東藝術倶楽部顧問 http://www.azuma-geijutsu.com/
◆美し国 副代表 http://umashikuni.co.jp/index.html
◆『この国を操り奪う者たち』(ヒカルランド)http://ikedaseiji.info/books.html
◆『離間工作の罠』(ビジネス社)http://ikedaseiji.info/books.html





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