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2008年 1/23 悠人、初の公式戦

悠人、初の公式戦

 10月21日、埼玉県川越市の安比奈(あいな)親水公園野球場で、
日本少年野球(ボーイズ)埼玉県支部秋季大会の準決勝・決勝が行われ、
オール草加ボーイズは、2年生チームとジュニア(中学1年)の部ともに準優勝した。

 悠人もジュニアチームのショート・2番で出場し、
準優勝に大きく貢献した。

私も、三連休を利用して埼玉の家族のもとに帰り、
悠人の中学初の公式試合を見ることができた。

 次男聖人達のこの時は、まだ試合ができる段階でないと、
ジュニア大会そのものへの参加ができなかったことを思えば、
格段の進歩と言える。

それだけにレギュラーポジション確保も熾烈なわけである。
3月入部以来、わずか半年ながらも、
当事者達にとっては真剣なドラマがあった。


 ところで、この安比奈公園は、かけがえのない思い出の地でもある。
 あれは、もう3年半も前のことになるのか。

 次男聖人が中3で、ボーイズ最後の年であった。

 その年の3月、それまで病気とは全く無縁だった郷里愛媛の母が
急に腹痛で動けなくなり、地元の病院に入院したとの連絡が来た。

担当の医師に電話すると、胃癌の末期だという。
ただちに、飛行機で迎えに行き、都内の病院に転院させたが、
医学的にはもう手遅れで処置がないとのこと。

そこで、埼玉の家族の元に連れて帰り、
久し振りに家族7人水入らずで暮らした。

いつも正月等の帰省時にしか一緒に暮らしたことがなかったので、
母は「我が家に帰ったようだ」と心から喜んだ。

食欲も少し出てきたので、このまま完治するのではと思ったが、
結局4月15日、私の腕の中で、孫達に手を握られながら、
14年前に先立った父の元へ旅立った。

 結局、聖人の試合を一度でも観たいという母の願いはかなえられなかった。
 

 そして、その直後に、この安比奈公園球場で行われたのが、
関東大会の埼玉県代表決定戦だったのだ。

1点差で負けている重苦しい展開で、
ランナー一人を置いて一番の聖人に打席がまわってきた。

センターから右への低いライナー性のヒットにこだわる聖人にしては、
珍しく強振したバットからレフト方向にフライがあがった。

ベンチのコーチが思わず「ああ!あげてしまった!」と叫んだが、
以外に打球は伸びて、ヘンスを越えてその奥の公園の散策路まで飛んだ。

聖人にとっては、その後の高校野球を通じても、
硬式野球で最初で最後のホームランである。

 そのホームランボールは、
それ以降マンションのリビングに置いてある母の位牌の前に今も供えられている。

 聖人達オール草加ボーイズは、この逆転ホームランで勢いづき、
結局コールドゲームでで関東大会出場を決めた。

また、春の県大会、夏の全国大会県予選も全て勝ってしまった。
1年時にジュニア大会にさえ出してもらえず、
コーチ曰く「オール草加始まって以来の弱小チーム」の、
この豹変ぶり。

一番バッターの聖人は、
弔い合戦のごとく通算5割以上の打率を残した。

 今から思えば、母が風になって押してホームランにしてくれたのではないだろうか。

  
 この安比奈公園野球場に入った瞬間、
あの時のホームラン、母、そして7人家族の水入らずの生活を思い出した。
 
 
 悠人達の準決勝試合まで時間があったので、
あのホームランが落ちた辺りをゆっくり散策した。

ちょうど入間川から流れ込む公園のせせらぎに、
秋の柔らかい陽光を受けたコスモス、すすきが映えて、
まるで母がそこに来ているように輝いて見えた。

思わず、一番輝いて見えるコスモスに焦点を当ててシャッターを押した。

グランドにレンズを向けると、
悠人達1年生チームがトスバッティングをしていた。

すぐに悠人にフォーカスしてしまう。
聖人のこの時分は、チームで2番目の大きさだっただけに、
思わず「まだまだ小さいなあ。早く成長期こないかなあ」と
心でつぶやいてしまった。

 でもちゃんとレギュラーを確保して、
こうして思い出の地に連れて来てくれた。

普段から人一倍思いやりのある悠人だけに、なおさら感謝した。

 聖人と悠人は、5歳の歳の開きがある。
聖人が小2の秋に、里緑ヶ丘パワーズで野球を始めた頃は、
悠人は漸く3歳になったばかりだった。

ちなみに長女の真菜は、この年に生まれた。

 その3年前、阪神淡路大震災、地下鉄サリン等オーム事件を対処した後に、
都内の官舎から今のマンションに引っ越してきた。

他に遊ぶところもない市街地では、
中学でサッカーをする長男英人以外は、
土・日、家族全員パワーズの練習場である、
マンションの目の前の里小グランドで過ごすことになった。

生まれた時からずっとお兄ちゃん達の応援の中で育った真菜にとって、
一番の遊び相手は、三つしか歳の差のない悠人であり、
悠人もよく真菜を可愛がって遊んでくれた。

 サッカーと野球どちらでも選択肢のあった聖人と違って、
悠人にとっては聖人の野球がスポーツの全てであった。

音楽家の家で育った子供が自然に絶対音感が身に付くように、
悠人は教わることなく野球センスが身に付いたのかも知れない。

 というのは、今でも鮮やかに瞼に残っているシーンが私にはある。
 パワーズに入団する前、
引っ越してきたマンションの5階のルーフバルコニーの広場で
聖人と野球をしている時、一緒について来て見ていた悠人に、
「打ってみるか?」とプラスチック製のおもちゃのバットをわたしてみた。

すると、なんと大人のように大きく大上段に堂々と構えるではないか。
そしてテニスボールを投げると、
見事なフルスイングで真芯に当ててはじき返した。

これには親の私がビックリした。 

 その時の悠人の力強い大きな構えは、
悠人の野球選手としてのスタートの姿として、
今も鮮やかに私の瞼に焼き付いて残っている。
 
 悠人は、小学校に入学するとただちにパワーズに入団した。
聖人より1年10ヶ月早く本格的に野球を始めたことになる。

 ただし、体格は聖人より頭一つ分小さい。
もっとも私も小学時代は、常に最前列に近く、
中学に入ってから約35センチ身長が伸びた。
悠人は遺伝的に私の体質を受け継いでいるのだろう。

 オール草加での悠人の背番号は44。聖人は30だった。
身長の高い順に2年から付与されるので、
番号が大きいということは背が低いということだ。
ちなみに現在47番以上の番号はない…。

 この年頃の体格の差は、そのままレギュラー確保競争のハンディにもなる。

 5月の連休の試合で痛い目に遭ってから、
心なしか悠人に元気が見られない。

そこで恒例の夏休みの鴨川での夏合宿に一緒に参加して、
特に毎晩の素振り等日々の積み重ねの大切さを意識させた。

 すると9月9日に、「ゆうとショートでがんばっているよ」と
妻からメールが来た。

さらに次の週の3連休で帰宅してみると、
夕食後8時に玄関を出て5階の広場で、
同じマンションに住む里中学校の一つ上の学校の野球部員3人と、
バトミントンのシャトルを使ってバッティング練習をするではないか。

かって私とおこなっていた夜のトレーニングを、
私がいなくなったので、悠人から声をかけて4人で行うようになったらしい。

 また小3の頃から箸等を自主的に左手で使うようになり、
今では包丁さばきも左手で器用に行なうまでになった。

 努力はきっと報われる。

 豊川での単身赴任以来、努めて週1回は、
悠人と真菜に携帯メールを出すようにしている。
が、ほとんど返事はない^^;

 ところが9月21日、珍しく悠人からメールがきた。
 「昨日の夜の素振りで手の皮がむけた。すごく痛い」

 その翌々日の練習試合。
当番の貴子から「二試合目、ショート、三番で出てる」とメールが来た。

練習試合は、通常2試合行われ、1年全員が出場する。
同じ1年でもレギュラーはAチームとして1試合目に出る…。


 10月3日は、悠人の13歳の誕生日。
仕事から帰ってさっそくメールを送る。
 「誕生日おめでとう!ますます本物めざし、
  楽しくファイト!!。
  お父さんはこれからリュックに重り入れて、
   登山靴で1時間ほど歩くトレーニング^^」
 
 練習は嘘つかない。
人に対する思いやりが人一倍強く誠実な悠人は、
体格の成長に伴って、必ずその能力を発揮してくるだろう。


 そして10月14日。
いよいよ埼玉県秋季大会が始まり、
帰れない私に妻が逐次メールで実況中継してくれた。

 「対八潮セネターズ。ゆうと2番・ショート」

 「1回3-0で勝ってる。ゆうと職人バントでセーフ。
  盗塁、スクイズ成功でかえってきた。」 

 「2回表5点入れたよ^^。
  3回にゆうとヒット打った!!2点入れたよ^^」

 「10対1終わった」

 貴子に「凄いね。おめでとう!」と返事するとともに、
悠人に「おめでとう!!すごいね。大活躍!!来週は応援に帰るよ^^」と送った。

 翌日は練習だったらしく、夕方貴子からメールが来た。
夫婦も29年やっていると用事のない限り妻からのメールは珍しい。

 「いいお知らせ~~!!ゆうと次の試合はサードやるかもと言ってたよ。
  松崎先発で、岩立ショート、沼センターで練習したみたい。
  使える子が絞られてきた。」
 
 松崎君、沼君、岩立君は小学時代、
ともに市の選抜メンバーであるが、
今の時点では、体格的に悠人より大きく、
彼らがショートに入ると、悠人は控えに回ることになる。
 
 これからさらに、3年時の夏の大会のレギュラーを目指す
厳しいチーム内の競争が激化する。
それがまたチームの総合力アップとなる。

 悠人は入団当初の投手グループからは外れたものの、
今のところ、左右打ちができること、足が速いこと、肩が強いことの利点がある。
体格の成長とともに楽しみである。

 妻に「へ~~凄いね。楽しみだね。練習は嘘つかないから^^。
    ま、何事も峠のない坂道はないし、朝の来ない夜はないからね^^」
と打ち返していた。

 「プレイボール!!」

 いよいよ準決勝が始まった。
 応援する位置も、3年前の聖人の試合と同じ所だ。
 
 1回表の相手の攻撃を、
同じパワーズ出身の左腕エース広橋君(二つ上の兄は全国ベスト8)が
簡単に三者凡退で退けると、
その裏いきなりオール草加がチャンスをものにした。

 1番バッターが四球を選んだ。
通常なら2番の悠人は送りバントだ。

ところが、三塁前に絶妙なドラッグバントで悠々内野安打に。
後で悠人に聞くと、悠人の場合は「送りバント」でなく、
ヒット狙いの「セーフティーバント」のサインが出るとのこと。

貴子が先日メールで送ってくれた「職人バント」とはこのことかあ、
と思わず心でうなった。

 オール草加はこれで勢いに乗って、初回3点を取った。
更に2回には満塁で悠人に打席が回り、
見事にライナーのライト前ヒットを打って二人をホームに帰した。

 結局、10-0のコールド勝ち。

 五月の連休の試合後は、
一緒に入団したメンバーの能力と体格のよさから、
悠人はもう試合に出る機会も無くなるのではないかと心配していた。

ところが今回の試合後には、
チームのお父さん方から「あのバントヒットと走塁が勝利のポイント」と
絶賛していただいた。
 

 引き続き行われた、新鋭チーム「越谷Kクラブ」との決勝戦は、
投手戦となり、結局0-2で敗れてしまった。

オール草加は、わずか二本しかヒットが打てなかった。
その1本が悠人の左中間二塁打である。

 またその一つ前の打席では、セーフティーバントを試みた。
打球が死にすぎてホームベースの直前で止まり、
すぐに捕手がとって一塁に送球したにもかかわらず、
間一髪の差でアウトになるタイミングで走り抜けた。

 実は二試合目は、一塁の審判をしていたが、
失敗したバントを微妙なタイミングにしてしまった悠人に、
我が子ながら驚きながら「アウト!!」と大きく宣告した。

 「男子三日会わざれば刮目すべし」
 まさに練習は嘘をつかないなあと、親として感動した。

 結局二試合で、写真は準決勝の1回に悠人が三塁まで進んだシーンしか
撮らなかった。

 久し振りの試合の応援でカメラを構える暇がなかった…^^;
 しかも決勝は、滅多に帰れないということで、審判をさせていただいた。
  

 その日の夕食。
 次は、正月休みまで帰れないので、今年最後の家族との食事になる。

家族の前で悠人を褒賞した。副賞は大枚一千円。

 これはお小遣いではない。
「プロを目指す」という悠人のプレーに対する報奨金である。

 「プロ」とは回りの人を喜ばせ、
幸せにする人のことであり、
よい働きをすることによって稼ぐものである。
悠人もやがて理解するであろう。

  ちなみに「働く」は、
本来の「はたらく」という大和言葉を
大陸からの帰化人が中国語で訳したもの。

「はた」は周囲の人、「らく」はたのしませること。
つまり、回りの人を楽しく幸せにするのが本来の日本でのはたらくである。

人が動いて自分が儲けるだけでは、
本来の日本では、はたらいたとは言わない。


 翌日には、仕事で東富士演習場に入った。
 「今週は富士だよ。すすきのプレゼント!
  日本一のサード・バッティングめざしてファイト!!」

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メルマガ:心のビタミン(エッセー) http://www.emaga.com/info/heart21.html
北海道の四季(写真) http://groups.msn.com/jjt8khvnlvgq2ipf5spd2vq9r4
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追記・・・・このエッセーを書き終えたあと、妻から「悠人、背骨通再発。
      野球やめようかな~~と弱気になっている」とメールが来た。
      電話すると、さすがに沈み込んでいる。
      完全に治して、1年ぐらい遅れたって大丈夫だよ、話した。
      遠く離れて、ただ、一日も早い悠人の完治を祈るのみ。
      ただ、もし、野球断念の決断をしても、それもよしと!と
      暖かく再出発を励ましてやりたい・・・。





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