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2007年 12/16 実録、弓張山系完全縦走・・・その一

実録、弓張山系完全縦走

苦闘12時間

9月28日と10月18日の二日をかけて瓶割峠以南の弓張山系を完全縦走した。

弓張山地は、南アルプスの明石山脈が南に伸びて
愛知県と静岡県を分けながら東三河平野の東海道線付近で
平野部に没するまでの一連の山並みをいう。

地形学的にはさらに三河湾を越えて渥美半島の中程に飛び出た
大山・雨乞山塊まで含まれる。

中央構造線を隔てた鳳来寺山など奥三河の山々が
1500万年前の大火山地帯の名残で険しい地形を形成しているのに比して、
この弓張山系は全体的に古生層の標高数百mのなだらかな丘陵のような山並みである。

この県境の山並みを、三河地方の人は弓張山系と言い、
駿河地方の人は浜名湖の西にあることから湖西連峰と呼んできた。

先史時代からの伝説や史跡に富み、
また三河と駿河さらに北部は信濃との国境の要衝でもあったことから
歴史上の様々なロマンも薫る。

その一方で自然がよく保存され、
地質学的にも、植物・生物学上も貴重な宝庫となっている。

弓張山系の「弓張」は、
三河大野の城山の北方約1.5kmのところに標高679mと記された峰があり、
これを今でも地元では弓張山と呼び、
この山の名を冠して三河地方の人々は
「弓張山系」と古くから呼ぶようになったらしい。

東三河平野のほぼ中央に位置する豊川市街から周りを見渡すと、
北面の本宮山地と東面の弓張山系が屏風のように平野を取り囲んで見える。

東北から南西に流れる豊川、
つまり中央構造線がこの二つの山地を地形的に分断している。

さらにこの豊川の上流を詳しく見れば、
豊川と弓張山系間に富士山の形をした独立峰である吉祥山が見える。

今年はこの周辺の見える山を全て歩こうと決心して、
春から夏にかけて北面の本宮山を西から東に縦走し、
初秋に吉祥山を登った。

いよいよ最後の仕上げとして今回弓張山系縦走を敢行したわけだ。

ただ、弓張山系は南アルプスまで続く一連の山脈である。
南端は東海道本線の二川駅のすぐ北なので、
ここを起点に北へ行けるところまでいってもいいし、
逆に終点としてここからJRで帰宅することもできる。

問題は北端をどこにするかである。
弓張山系が天竜川以南と知ったのは縦走後のことである。

本宮山地縦走前までは、
本宮山から下りて帰るために予定しているJR飯田線東上駅に早朝電車で行き、
駅から南東の吉祥山をまず北から南に縦断し、
そのまま東名高速道路の架橋を渡って弓張山系稜線に登り、
二川駅まで一気に一日で歩く予定であった。

ところがまず本宮山を縦走してみて、
山歩きはそんなに甘くないことがわかった。

だいいち日本のほとんどの山の稜線にあると思っていた山道さえない場所もあり、
稜線も複雑である。

その為本宮山縦走後、
埼玉の家族のもとに帰ったときに新宿の専門店で登山靴を購入し、
その足慣らしも兼ねて吉祥山を縦走と切り離して登った。

さらに本宮山の体験に基づいていろいろ図上で検討して、
東上駅から東にほぼ10kmのところに位置する
瓶割峠から二川駅まで縦走することにした。

愛知県新城市中宇利から静岡県三ヶ日町を結ぶ道がこの峠を走っており、
この際同じ官舎の1階上に住む小森3科長に甘えて
早朝この峠まで車で送ってもらうことにした。

科長の小5のお子さんも豊川に引っ越してきてから少年野球を始めており、
仕事で帰りの遅くなるお父さん代わりに
私が夕方官舎前でアドバイスすることもある。

今では科長も週末は監督をしているらしい。
そのため練習に間に合う早朝なら車で送ってもらえるとの
人間関係論的緻密な!?見積もりをした。
案の定喜んで送っていただいた。

2万5千万分の1の地図での計算によれば、
約30kmを10時間で一気に歩く予定であった…。

9月23日、秋分の日。
5時に起き先回の反省に基づいて、
おにぎり6コを作り、お茶等水分2㍑、予備のパン等甘味料、
着替え等をカメラ用リュックに詰め、3科長の車で官舎を6時に出発。

6時50分、瓶割峠に着くも、まず唖然とする。
峠には採石場ができている。

巨大な人工クレーターで稜線縦走路が抹殺され、入り口がわからない。
車から降りて科長に見送られたあと、
実は峠や採石場内をうろうろして、
やがて地図と現地をにらめっこ。

稜線と並行に西側を南に走るジープ道をしばらく南下して左折、
まっすぐ薮越えしてでも稜線上にたどり着こうと、
意を決して歩き始める。

すると採石場から100mほどのところに新たな登山道が作られ、
「金山頂上へ」という小さな案内板がぶら下がっていた。

車を降りてからここまで20分のロスタイム。
なにやらこれから先の縦走の困難さを予感させるものがあった。

7時10分、その登山道口から登り初め、
7時半には稜線上の最初の山となる標高423mの金山に到着。

標高差約200mをほぼまっすぐ20分で登り切ったことになる。
さすがに最後はかなり息も上がり、全身汗が噴き出る。

リュックを下ろし一息つくと、
「チチチ」「リーン、リーン」という虫の声が聞こえる。
暑い中にももう秋が訪れている。

呼吸が落ちついたところでいよいよ稜線沿いに南下、縦走開始。

歩き始めたところで作業服にリュックを持ってない中年の男性とすれ違う。
早朝のことでもあり、お互いにビックリするが、
「おはようございます」と声を掛けると
「いってらっしゃい」と気持ちよく挨拶が帰ってきた。

多分、採石場からの朝の散歩と思われる。
結局、この日12時間に及んだ縦走間、
人に会ったのは、この時が最初で最後となった。

稜線は、常緑広葉樹が生い茂り、緑のトンネルとなっている。
陽射しを遮ってくれるものの、低山縦走の特性上、やや蒸し暑い。

この為か涼しくなるまで登山者は余りいないようだ。
蛇の時期が終わるまで待つという人もいるらしいが真意のほどはわからない。

いずれにせよ今回も3連休の中日にかかわらず人の歩いた形跡がない。
その為、蜘蛛の巣にはまいった。

稜線道は風の通り道であり、昆虫の交通路ともなる。
蜘蛛にとっては獲物を捕る格好の定置網場となる。

その蜘蛛の巣が全く壊れていないということは、
誰も前に人が歩いていないことになる。

山に入った早々、この蜘蛛の巣に閉口していたが、
先ほどの人とすれ違ってからは蜘蛛の巣が無くなった。

しかし喜んだのもつかの間で、
金山からしばらくいくとまた蜘蛛の巣の連続である。

このことからも採石場の早番あるいは宿直の方の朝の散歩と判断したのである。

縦走をはじめてまず目についたのが、
森の中の至る所に生えているキノコである。

白、赤、キャベツ状、灰色、茶色等、
様々なキノコが落ち葉の下から顔を出している。

森の豊かさの象徴である。
特徴のあるキノコを見つけると、
山道から少し森に入ってはデジカメで接写する。

撮影で立ち止まると、
「ミーン、ミーン」という蝉の大合唱に気づく。

気候的にはまだまだ夏真っ盛りだ。

金山からしばらく行くと、
急に森がなくなり一部禿げ山になっている通称「ガラ場」に出た。

登山客が石を1mほどのピラミッド上に積み上げた
ケルンという小山がいくつかある。

潜在意識に残る太古の儀式
あるいは自然・宇宙との一体感の無意識の表現なのだろうか。

帽子をその上に載せて記念撮影をさせてもらう。

ここからは東の浜名湖、西の雨生山(うぶやま)の
山麓越えの吉祥山の景色が素晴らしい。

この辺りから雨生山の南側にかけては、
溶岩が表面近くまで迫り、
またその蛇紋岩のニッケル障害のためか樹木が育たないらしい。

低い松と草木しか生えてなく、
学術的にも貴重らしいが、
お陰で絶好の写真ポイントでもある。

また、可憐な釣鐘草?などいろいろな花も咲いていて、
焦点距離の深いデジカメで花を手前おいて
吉祥山などを遠景にした構図の写真に挑戦する。

縦走間は緑のトンネルがほとんどで
デジカメの馬鹿チョンカメラの活躍の独断場である。

せっかくフィルムの重い本格カメラEOS1vHSを
カメラリュックに入れて持ち歩いていたが撮る場面があまりなかった。

結局、EOS1vHSが主として活躍したのは、
この場所での撮影のみで、
あとは体力と気力の鍛錬のためのリュックの
「重り」としての役割が主になった。

8時50分、標高313mの雨生山に到着。
このあたりは常緑広葉樹が生えないため熊笹で歩きにくい。

しかも陽射しがきつくかなり暑い。
汗が連続して噴き出る。

雨生山をすぎると東名高速道路のトンネルのある標高154mの宇利峠まで
急坂を下り、そこから今度は急坂を登り10時30分に標高382mの三角点に到着。

図上では2キロ余りだが、
1時間40分もかかってしまった。

弓張山系は標高は低いが、
稜線はそれなりに上下しているのでかなり足腰にくる。

かえって低いだけに高温多湿で、
頂点を越えるたびに汗が吹き出して、
まるでインターバルトレーニングをおこなっている感じだ。

ここでおにぎりを1個ほおばりながら15分の休憩をとる。

おにぎりを1個食べ、お茶を飲むと力がよみがえる。
とにかくこれを繰り返して駅に着かない限りは帰れない。

再度歩き始めると、
足元の厚く敷き詰まった落ち葉の上をかなりのスピードで跳ねていくものがいる。

立ち止まって確認すると、
なんと山の頂上にもかかわらず土ガエルがいた。

驚くとともに跳ねていくあとからそっと近づいてデジカメで撮っていると、
その先になんかニョロニョロと動くものが・・・。

うわ!蛇だ!!・・。

こちらの恐怖心が伝わったのか、
蛇の方も慌てて逃げ去っていった。

そういえばいたるところにイノシシが腐葉土となった落ち葉を足でかいた跡もある。
森は思いがけない生き物に溢れている。

常緑広葉樹は日陰を作るため、
夏の直射日光が地面に当たらず、
土の乾燥を防ぐ。

そのため豊富な落ち葉が滋養あふれる腐葉土になる。
その腐葉土は有効微生物群の繁殖の賜でもあり、
キノコなどの菌の温床となる。

ミミズ、昆虫などのすみかともなる。
その昆虫類などはカエルを養い、
カエルは蛇を支え、
その蛇が鳥や動物を招く。

そして動物等の糞尿や命を全うした死骸が
腐葉土となって大地に還り森を育てる。

調和のとれた永久(とわ)の循環社会を形成している。
それは小地球ともいえ、本来の地球の共生の姿を見せてくれている。

つまり森は生き物の宝庫である。

11時40分、新城市と豊橋市の境界となる標高464mの平尾山に到着。
今回の縦走で一番高い地点だが、
森に覆われ展望はできなくそのまま進み、12時中山峠に到着。

歩き始めてすでに5時間。
地図上ではやっと三分の一まで来ただろうか。

かなり疲れてきたので、20分の大休止をとり、
おにぎりに加えチョコをほおばる。

いつの間にか水も1リットル近く飲んでいる。

中山峠には「豊橋自然歩道本線」「本坂峠方面健脚コース」という
しっかりした案内板があり、ここから歩道がしっかりと整備されている。

実は、豊橋自然歩道は、
日本で最初に市民の力で整備された自然歩道なのである。

昭和44年、厚生省は、東京都八王子市の「明治の森高尾国定公園」から
大阪府箕面市の「明治の森箕面国定公園」までの
11都府県約90市町村にまたがる長さ1,697kmの東海自然歩道を提案した。

ところが愛知県では奥三河の鳳来寺山など北部を通り、
豊橋市内を通らない。

そこで豊橋自然歩道推進協議会の方々が中心となって、
昭和44年に葦毛湿原から整備を始め、
現在では14の支線・巡回遊歩道と、
これをつなぐ稜線である中山峠から東山(松明峠)までの
本道約16kmが見事に整備されている。

また、530(ゴミゼロ)運動発祥の地としても有名である。
実はこの豊橋自然歩道の本線だけでも今回を含めじ後3回歩くことになるが、
市民の力で常に整備されている歩道を訪れるたびに
地元豊橋市の人々の自然に対する高い志に深い感銘を受けることになる。

ちなみに豊橋自然歩道のある愛知県側は、「石巻山多米県立自然公園」に指定されている。

中山峠をすぎてしばらくすると、
大きな傘モミの木が何本も空に向かってタワーのようにそびえていて感動する。

ただし、もう稜線道から逸れて写真を撮る気力はない。

13時20分、豊橋自然歩道では一番高い標高445mの坊ヶ峰の麓に到着。
峰の頂点まで高さにしてあと50mほどの最後の急坂を前に約10分休憩し、
チョコとビタミン入り天然ジュースでエネルギー補充。

この間は約3kmを1時間のハイペースで歩いたことになる。

これには思わぬ「助力」があった。

稜線道を塞ぐように杉の枯れ枝が垂れていたので、
蜘蛛の巣を払うのに使おうと空手チョップで「エイ!!」と切って、
約1mほどの棒を作った。

これが歩くときにちょうどいい「杖」となって、
リズミカル良く歩けるようになった。

若い頃北海道の冬山で訓練したスキーの「パスカング走法」のように、
上半身の筋肉も使って全身でタイミングよく歩けるのだ。

スキーストックのような杖を両手について歩く中高年の方々の姿を山で見ていたが、
なるほど全身運動となって、
杖のない脚力だけの登山よりもはるかに歩行力がアップする。

そういう思わぬ「体得」により、
体力の消耗以上にスピードアップできたわけである。

またそういう目で気をつけて見ると、
いろいろな山の登山口には、
使用済みの自然木の「杖」が重ねて置かれている場合が多い。

下山した時に、次の人のために置いていったと理解し、
心よく借りて登ることを是非お薦めしたい。

休憩後約25分かけて全身全力で頂点に達する。
山頂には坊ヶ峰神社があった。

小さな祠だが「浜名西国32番札所本尊正観世音菩薩宝暦2年」と
かかれた札があった。

宝暦2年といえば、江戸時代の1752年である。
今でこそ無人の山奥であるが、かっては参拝者が溢れていたのであろう。

ここから標高328mの本坂峠まで急坂を一気に下る。
途中道の左右に夫婦岩があり片方づつ撮る。
丸太で整備された急な階段を下りながら、
逆コースをとっていたらこの急坂を上らなくてはいけなかったのだと、
ホッとする。

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