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2007年 6/13 たった1枚の写真

それは、妻の免許証のポケットに、
上部のほんの一部がはみ出して見えていた。

まぎれもなく、たった1枚しか残ってない、
妻のお母さんの写真である。
何年振り、いや、もう20年ぐらい前に見たきりではないだろうか。
こうして免許証、つまり、常に妻とともに歩んでいたんだ。

ひょっとすると、妻のお母さんに改めて誓うために、
今回の一連の物語があったのかな?

その物語とは、こうである。
長男英人が、やっとこの春大学を卒業して社会人になったため、
保険証の被扶養者欄から削除することになった。

愛知の職場で手続きを終え、配達記録の郵便で1週間ほど前に、
鳩ヶ谷の妻のもとに送っていた。

ところが、妻は仕事が忙しく、郵便局に取りにいけなくて、
この週末、空手道の会議等で単身赴任先から帰宅した私が、
代わりに土曜日の夕方受け取りに行くことにした。

窓口で受け取るには、不在郵便通知票と本人確認証、印鑑が必要である。
そこで、妻が私に自分の免許証を渡してくれたわけだ。


一緒に郵便局についてきた小4の長女真菜に、
「これだあれ?」と写真を取り出して聞いてみると
「おかあさん!」と即答した。

かすれたモノクロの写真には、丸坊主の赤ん坊を抱いた、
昔風の短いショートカットパーマの髪型ながら、
30歳ぐらいと思われる清楚な笑顔の美しい若い女性が写っている。

真菜は、その赤ん坊を、妻の生まれたときと思ったのだろう。

実は、今回改めてその写真を見るまで、私もそう理解していたのだ。
ところが、よく見ると、その赤ん坊は2歳ぐらいだ。

おかあさんは妻を産んで4日目に、
34歳の若さで産褥熱のため亡くなっている。

と言うことは、この写真は、結婚前のもっと若い時の写真で、
赤ん坊は妻ではなく、知人か親戚の子なんだ…。


私が、この写真を初めて見たのは、妻と知り合って間もない頃だった。
たった1枚しかないおかあさんの写真と伺って、
てっきり、おかあさんが生まれたばかりの妻を抱いた写真、
と今まで勘違いしていたわけである。

いずれにせよ、その時、おかあさんのこの世のもっとも大事な忘れ形見を、
生涯かけてきっと幸せにします、と秘かに誓った。


あれから、もう27年。
妻は、4人の元気な子供を産んで40代後半になる。

一番下の真菜には、おかあさんは30代と言い聞かせて信じさせているようだ。
真菜の同級生のおかあさん方も、24歳の長男は、
私の先妻の連れ子と信じているやと聞く。

結婚4年目に、
3回の切迫流産を繰り返したあと、
やっと長男が生まれた時には、
おかあさんの二の舞にならずに良かったと安堵するとともに、
それ以降は、母親の愛情を知らずに育っても立派な母親になるんだなあと、
秘かに感激したものだ。

それが、今や、男3人女1人、4人の母親となり、
私の単身赴任が続くなか、逞しく子育てと仕事を両立している。


郵便局から帰ると、リビングの食卓で、三男悠人の勉強を見ていた。

中1になった悠人が、初めての中間試験の成績表を持って帰り、
妻は目が点になった。

悠人は、次男も通った名門オール草加ボーイズで硬式野球をはじめ、
野球で強豪高に行く、と決めている。

しかし、まさか3桁の成績表を持って帰るとは。
妻にとっても初めての体験だったのだ。

三男は、典型的なB型性格で、
授業中もはしゃぎ過ぎて勉強に集中していない、
との妻の見解である。

そこで、妻が、毎晩30分、
寝る前に塾の先生、となったわけだ。

さすがに妻は、生前の母も学校の先生だけあって、
感情的な教育ママにならず、淡々といい雰囲気で勉強を見ている。


免許証を返しながら、改めて、今度は妻の横顔を久し振りにしみじみ眺めた。

俺は、おかあさんに秘かに誓った約束を果たしているだろうか…。

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