2001年 8/26 2001年夏の思い出(その二)
これなら優勝できると思ったとき、チームに異変が起こった。
サードの5年生の父親が子供を突然辞めさせたのだ…!
来年はキャプテンの予定だったのに…。今時の親には何故ここまでやるのか理解できなかったのかも知れない。
しかし、チームの方針は〈去る者は追わず〉。
ここで一番大事なことは、子供が優勝を目指し、子供達の自由意志で集まって練習しているということだ。監督は、その子供達の意志の上で、ボランティアで28年間ほぼ毎日少年野球の最高のレベルを教えに来ているのだ。
調子を崩して投げられなくなった時、聖人に
「無理して野球を続けることはないのだよ。」と言った。
すると
「僕は、野球を辞めないよ!
野球が好きだし、今辞めたら負け犬だ!今度ベアーズを倒して優勝する!!」
練習の一環として大宮球場に埼玉県の高校野球県予選を見せに監督が連れて行った。
パワーズ出身者がいるいる鷲宮高校と甲子園出場校となった高校との試合だ。
これまでの子供は最初は見てても、やがてあきて遊びだしたらしい。ところが今年の子供達は、一番下の悠人まで身を乗り出して最後まで真剣にプレーを見たらしい。だからその次の試合も見せたとのこと。
小学生も大人も同じ。目指せば本来生まれて持っていた力を発揮する。上手に出させるのが教育だ。
それに子供は思ったより逞しく、仲間意識も強い。遊ぶときも学年を越えて兄弟のように名前を敬称抜きで呼んで一緒に遊ぶ。また、普段父親不在で、妻が小さい子を抱えて仕事している我が家の状況を熟知して、チームの親が聖人をキャンプや釣り等に自分の子供と一緒に連れて行ってくれる。
妻も試合の時などは、手作りのパン等を焼いて差し入れする。栄養の重要性も妻を通じて親に浸透してきた。
大会終了後の祝勝会(反省会)で、当初はファーストフードを子供達に買って与えていたが、添加物の怖さ、栄養の大切さから貴子達が手作りの料理を持ちよるようになった。野球を通じて、子供達、親たちが一つに結ばれているのだ。
コーチ達も
「池田さん、子供のことは私達が責任を持って親として指導します。
安心して北海道で仕事してください」と帰る度に言ってくれるのだ。
ところで、問題は、誰をサードにするかだったらしい。
聖人が調子いいときはサード方向に引っ張る小学生はいないとは言え、通常一番打球が来るところだ。
一塁の主将で市の選抜チームの主将である6年生にサードをやらせ、新しく入った5年を一塁にしたこともあった。だが、市の選抜のレギュラー3人が投げる球は速く、それをはじくこともあった。
一塁が送球を取れなくては試合にならない。
試行錯誤の結果、センターの5年生をサードに持ってきた。フライもあまり捕れず決して上手くはないが、聖人と同じように2年生からチームに入って必ず練習に来ている。
おばあちゃんが育てているので、監督・コーチが親のようで、性格も良く知っている。
9日、ANAの最終便で鳩ヶ谷に帰り、翌日から早速臨時コーチ??で合流したときは、漸く新布陣が固まった時だった。
暑い中、本当に良くやってるなと感心する。それも、やらされるのでなく、1球1球に向かう気迫さえ感じる。高校野球となんら変わらない。
雨の中のノックなど私自身「もう止めれば」と思ったほどだ。
部員が少ないと言うことは、それなりに大きなメリットがある。
先ず、試合に出れない落ちこぼれが皆無となる。6年になれば全員が貴重なレギュラーだ。
レギュラー全員6年でなおかつ6年の補欠がいる他のチームとは違い、個人毎の指導が十分となる。一人一人を確実に戦力化しないと選手が足らないのだ。
私は、新しいサードの子につきっきりで教えた。サードは私も中学時代から守ったポジションだ。ピッチャーの投球動作にあわせて、低く構え、左右足を小刻みに前に出る…等。
結果として、サードは今大会エラーがなかったばかりか、負かした他チームの子供から「うちの6年生のサードより上手い!」と言わせたほどだ。
無死1塁で苦しいときもサードゴロを2塁に投げ走者を封殺し、聖人をして「あれで助かった!」と言わせたほどだ。
2年から鍛えられている結果が本番で開花したのだ。練習の力を本番でもそのまま、いやそれ以上に発揮した。
決勝戦のネット裏。それまでに負けたチームの6年生がコーチと共に見ている。
するとそのコーチが、守備についている我がチームを指して「見ろ!!投球にあわせて全員がよく足を動かしている。さすがだ!お前達も見習え!!」
外野にボールが飛んだ時の練習も徹底された。
「外野がフライも捕れず抜かれる」ことを前提にしたバックホームの連携プレーだ。
6年3人をふるに活用する。抜かれた子供は、兎に角フェンスまで一生懸命走ってボールを早く取りに行く。同時に6年のショート又はファーストがボールを受け取りになるべく近くまで全力で走って行き、ボールを受け取り内野に返球。
それを更に最終的に聖人が中継してバックホームするという三段階返球だ。
極論すれば、何処を抜かれても、捕手を含む4人の6年を核心として、9人全員が列となって返球する。パワーズ独特の守備版全員野球だ。
試合でこれが力を発揮した。小学校の野球では、通常、外野を抜いたらホームランだ。
ところが、これをホーム前でタッチアウトにした。だから相手も外野が後ろにそらしてもサードで止まるようになって点が入らない。聖人の球を二人連続して外野に打つ事はまずないからだ。
レギュラーを守備につかせて投手がわざと緩い球を投げて打者に打って走らせる試合形式の練習を多く行った。9人が守備につくと、残りは下級生4人が順番に何回でも打って走ることができるから、下級生も野球が最初から楽しくなる。
ボール拾いだけの子などいない。大所帯の他のチームではあり得ないことだ。
何と、悠人が聖人のバットを短く持ってチャンと内野ゴロを打つのだ。
その確実なバッティングに監督も「上級生は見習え!」…。
野球が面白くなったのだろう。
悠人は、午前中も、更に4時から帰っても「おとうさん野球をやろう!」と暗くなるまで私と二人で投球や捕手の練習を行った…。
結局、大会は、準々決勝10-0コールド完封。準決勝9-0完封勝ち。
決勝は、宿敵桜ベアーズだ。大会関係者の予想は、春と同じくベアーズの圧勝??
お互いに市の選抜チームに4人づつ選手に選ばれている。だが部員数は相手は30名!
挨拶で並ぶと列が倍の長さだ。レギューラーの体格もいい。
ところが結果は、聖人達が11-4と圧勝した。6年生以外の小さな子供もバッターBOXで大きな気合いの声を出して、大きな投手に立ち向かい四球を選ぶ。
そして6年が打って、盗塁し、足でかき回して点を重ねた。
外野が何度か後ろに球をそらしたが、練習通りのバックホームで一度刺すと、二度目からはホームにつくのを諦めた。
チームに気合いが入っていると守備も変わる。
外野が捕れないはずの?フライを何度か捕ってはガッツポーズ!!応援も大きな拍手!!
相手の盗塁も聖人のクイック投球と捕手の素晴らしい送球で全て刺した。
そして、最後は、1死一塁で、何と一塁ゴロを3(1塁)ー6(遊撃)ー1(投手:聖人)のゲッツーで劇的な試合終了!小学生でプロ並みの完璧なダブルプレー!!
聖人が与えた四球は各試合1個づつのみ。毎回の奪三振。打撃も10打数6安打で、決勝では決定的なスリーランホームランも打って4番の責任を果たせた。
やはり、「練習は嘘つかない」と皆で言い合った…。
そして、閉会式。チームの優勝表彰に引き続き、個人表彰で聖人が最優秀選手賞、最優秀投手賞を受賞。冒頭のようにわざわざ講評で聖人を讃辞して頂いた。
閉会式後、記念撮影に、監督、6年生の胴上げ。親子一緒にどうあげだ。そして、地区に帰って4年振りの優勝パレード。4年前は聖人が一番後ろだったが、今度は悠人がその位置に。
集会所前の大人・子供混じってのビールかけ、そして祝勝会。
子供達には、前日から妻が作ったカレーがプレゼントされた。
ところで今回、素晴らしいエピソードがあった…。






